はつはる




黄金色(こがねいろ)の髪が、柘植の櫛にもつれながら梳かれてゆく様を、そう稲穂に似て居る。とりわけこちらの手にまつわりつくようなフワリと柔らかな心持が、など考えつつぼんやりと見やる。すっくりとした(うなじ)が目にはいった、かと思いきや、くるりとこちらを振り返り、ややもすると険を含んだ声音で、いったい何時からそうしておられました、と問われ、内心しまったと少々慌てながらいやなに今さっき目覚めたところだ、と何食わぬ顔で応えると今日のような日に何も言い争いから初めなくてもよかろうとでも思ったのか、それ以上追求しては来なんだ。
先程からちらりちらりと気になっていた、未だに内側に熱の熾った項にツと手をのばしたが、スルリと身を躱されて、さあお顔をあたってこられませと着物・手拭を何処からともなく鮮やかに取り出し、湯殿に押し込められる。見ると、石鹸から何からおろしてある様子で、いったい何時用意したものか、夕べは何くれと立ち働いていたが、ここまで隅々まで行き届くとはイツモながらほとほと感心する手並みだ。
それにしてもいつまで経ってもああいった、身繕いの様を見せぬ様子は頑なで、いつぞやだったか仕度の様を横に眺めていたら、本当に厭だといつも申しているではありませんかと、大層な剣幕でおこられたのを思い出す。そういった、かたいところもそれでまた好ましくは在るのだがと、そういった自分の思考に一寸笑いながらさぷりと湯を浴びた。
真新しい着物に着替え、さっぱりとした態で戻ると、はらりと三つ葉を散らせ、ちょうど出来上がったところですと卓に膳がしつらえてあり、席につくと盃に屠蘇がそそがれ、そこであらためて、あけましておめでとうございます、顔を合わせフタリ、新しい年を言祝(ことほ)ぐ。
雑煮に口を付けながら、フタリきりであるし、そう大層にしないでもとはおもうのだが、なんぞ拘りがあるのか、小さいながらも三段重に、年末から忙しく御節を用意したりするのを、まあ縁起物であるし、とこちらが食する様をさも嬉しそうに見ているのが、まあ好いか、という気持ちになるのだからお互いであろう。
ほう今年の昆布巻きは(にしん)か、たしか去年は鮭であったかというと何やら本当に可笑しそうに笑うので、どうかしたか、と問うと、いいえ去年もそんな事を仰っておられましたよと目元をほんのり朱に染めながらころころと笑っている。そうか、もう一年も経つのだな、と改めて思う。もう一歳(ひととせ)、また一歳(ひととせ)。日々是善キ哉。千歳(せんざい)萬歳(ばんさい)











私は大変なものを頂いてしまいました。
其れは霜月様のお正月小品で御座います。
フリー配布のお言葉に甘えて押戴いて参りました。
夫婦が…!夫婦が此処に居りますよ…!古女房ッぷりを遺憾なく発揮するシチロージとどっかりと腰をすえて将に"旦那様"なカンベエ様。
允に好い文章をお有難う御座いましたァ!

そんな霜月様の游宴亭はこちら