まるで其の姿は祈りを捧げているかのように。



部屋に申し訳程度につけられた小さな天窓から降り注ぐ日の光を浴びて静かに青年は立っていた。
額宛が外された秀でた額に幾筋か落ちた金の髪は光に透けて、輝きを放つ。
顔を僅かに俯け、澄んだ蒼を秘めた眸は今は閉じられており、其の淡い色合いを伺うことは出来ない。
風の無い湖面のように、静かな表情は例えるならば穏やかな眠りについているかのようで、何故か勘兵衛に声を掛けるのを微かに躊躇わせた。
「勘兵衛様」
気配を感じたのか、彫像が息を吹き返すかのように七郎次は顔を勘兵衛のほうに向け、若々しく闊達な笑みを浮かべる。
嗚呼、この青年は"生きて"いると、死人の眸を持つ男は思った。
生死の境を渡り歩く、この戦場において。未だ死に染まることなく眩しいほどに生気を放っている。
羨ましいなどとは思わない。唯、其の光がこの先自分と同じ道を歩むことで曇る事無きようにと、其れだけを思った。
「何を祈っていた」
勘兵衛がそう尋ねると、驚いたように七郎次は眼を見開き、首を振った。
「否、私は祈っていたわけでは…」
否定しかけて、言葉を止める。
「…そうですね、若しかしたら祈っていたのかもしれません」
緩く穏やかな笑みが其の白皙の貌に上った。
其れに興味を惹かれ、詳しく問おうとした勘兵衛の機先を制して七郎次は悪戯げな光を蒼の眸に瞬かせて口を開いた。
「でも、何を祈っていたかは秘密です」
「何故だ」
「云わずとも勘兵衛様ならお分かりになると、信じていますから」

深く、想う。
其れを祈りだと云うのならば、確かに祈りだろう。
神も仏も人を助けるものではない。縋らず、願わず、唯感謝を捧げるのみ。
けれど。
七郎次が想っていたのは神などという不確かなものではなく、もっと確実なものだ。
そう、今、触れられるほど、近くに居る存在。



どうか、どうか。
この命の続く限り貴方の傍らに在れますように。









お粗末!