Put all of you (if you don't take me)
瞳を閉じて瞼に浮かぶは鮮烈なる刃。
比類なき其の美しい太刀筋を幾度も見てきた。
迷いの無い刃は何時も敵を斬る為に振るわれ、自分を傷つける事だけは無かった。
だから何時の間にか信じていた。
この先。
何時も共に在るのだろうと。
だが、其の思いは破られ、この躯に残されたのは傷と過去の記憶。
サムライの時代が終わり、アキンドの用心棒として拾われて暫くした頃だっただろうか。
「死んでもいないが、生きてもいない」
俺は其れが堪らない。
そう、ぽつりとキュウゾウの口から零れた言の葉を覚えている。
肯定する事は出来なかった。否定する事も、また。
誰よりも思いを同じくしていながら、其の言葉に頷く事が出来ない自分を。
自嘲しながら仕方がないと諦めていた。
だが時代の流れに沿っただけ、と言い訳しながら実際のところはサムライとしての生き方を捨て去る事が出来なかった。
時代の流れに沿うのであれば刀を捨てるのが正しかったのだろう。
其れでも刀に固執したのは。
自分もサムライとしての矜持を最後まで捨てることが出来なかったからだ。
器用に生きる事は簡単だ。自らの心を折れば好い。
其れが出来ぬキュウゾウという男を。
自分は渇仰していた。
キュウゾウのように何もかも捨てて自分に正直には生きられぬ。
だが、密かに其の不器用なほどの純粋さを羨ましいと思っていた。サムライとして生き、サムライとして死ぬであろう其の真っ直ぐな生き方に憧れていた。
斬られた腕の感触は未だ生々しく、切り裂かれた胸の傷と共に痛みが彼を苛む。
だが恐怖は無く、唯裏切られたという口惜しさばかりが胸に募った。
やつが今までに二振りの刀で切り捨てたもののことは覚えている。
一人残らず喉を貫くか心臓を貫くかして、止めが刺されていた。
だが、今のこの自分の様は何だ。
生かされたとはいえ、未だに命を繋いでいる。
手加減したか、躊躇ったか。
やつは手加減など知らぬ男だからきっと自分でも知らぬうちに躊躇ったのだろう。
莫迦が、と吐き捨て歯を噛み締めた。
怒りが胸を灼く。
裏切るのであれば、この命全て持っていけば好いものを。