槍を操る事に長けた七郎次の白く長い指が勘兵衛の襟元で繊細な動きを見せる。
かちり。小さな金属音を立てて外套の止め具が止められた。
寸分無く主の出陣の支度をととのえ終えると、其れまで伏せられていた七郎次の眼が上を向き、長い金の睫毛に隠されていた蒼の眸が勘兵衛の闇色の眸を真っ直ぐに射抜く。
互いに言葉は無い。
無くとも絡んだ其の視線が何よりも雄弁に互いの想いを語っていた。

最後の戦になると判っている。
其れがどれほど激しいものになるかも。

微かな衣擦れの音と共に勘兵衛の手套に覆われた腕が七郎次へと伸ばされ、其の身体を抱き締める。
優しい抱擁に息を呑む気配は一瞬。
瞼を落とし双眸を閉じると、七郎次は応えるかのように額を勘兵衛の肩に預けた。
長く豊かな黒髪が絹糸のように透ける金の髪を柔らかく覆う。
服越しでさえ伝わる勘兵衛のぬくもりに、抑えた筈の様々な感情が僅かに零れ、七郎次の端整な顔を切なく彩った。
ゆっくりと躊躇いがちに上がった腕が勘兵衛の背へと回る。
この瞬間が永遠と成れば好いと思ったのはどちらなのか。
其の刹那でさえ惜しむように互いの身体を抱きしめ合ったのはほんの僅かの時。
緩く力を抜くとほどけるように先程まで一つになっていた熱が別たれる。
互いを隔てる其の僅かな距離こそが遠かった。



其れでも見交わした眸に強い絆を映し、繋がりを確認する。
イツモフタリデと。
刻んだ言葉は、其の胸に。









お粗末!