染
額から流れ落ち眸に入っては赤く視界を染め上げる血をぐいと袖で拭う。
布を適当に引き裂いて作った端切れで傷を押さえていた筈だが絶えず流れ落ちる血に染まりもう既に其れは用を成していない。
痛みは有るが戦いに昂奮して麻痺しているのかそれは気にならない唯視界を遮られるのが煩わしいだけ。
苛立つ儘に眼の端に引っかかった敵を獲物に定め手に馴染んだ朱の槍を振るう。
何の意味も有りはしない遭遇戦。唯生きて帰すわけにはいかぬ故、意味も無く敵を殺し意味も無く味方が死んでゆく。
腹を裂き、喉笛を潰す。心臓を貫くのは滅多にしないが其の感触は嫌いではない。
嗚呼病んでいる。
斬られるのも貫かれるのも実はそんなに嫌いじゃない。
痛みは生きているという実感を与えてくれる。痛いほど好いのだ。
唯動けなくなるのだけが唯一の欠点。
周りの敵を全て殺し尽くし少し手持ち無沙汰に成った。
荒い息を整え、感慨も無く血に塗れてごろりと足元に転がる首を蹴飛ばす。
邪魔だ。
敵であろうと味方であろうと死ねば骸。
厭わしい。忌まわしい。嗚呼嫌だ。
人の命を失う事を何も思わなくなった自分に吐き気がする。
心は磨耗し魂は灼かれる。
虚ろな眸がふと何かに呼ばれたように空を仰ぎ蒼穹を映した。
だが其の美しさに思わず顔を伏せる。
穢れている。
こんな自分を見てあの人は何と云うだろうか。
お粗末!
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