たがい




どれ程手を汚そうとも、其の姿は血に曇ることなく唯、清廉。
真っ直ぐに、高潔さを失わぬ其の背中をハナカケは眩しいものを見ているかのように眼を細めて見詰めた。

「人を斬っているのは同じなのにねェ…」
ぼんやりと呟かれた言葉にクモザルは訝しげな顔で隣の男を見やる。
「如何した」
「んー、あの人は何であんなにキレイなのかと思ってサ。護衛つっても、人殺して飯食ってるのは俺たちと変わらないのになァ」
何処が違うのだろうと思う。
同じように見えて何かが決定的に違う。
己の左腕を見やる。
見た目には生身に見えるが、実際は機械仕掛けの其の腕。
自分は機械化していて、あの人は生身だから?
違う、何の根拠も無くハナカケはそう思った。
例えあの人は機械化したとしても変わらないだろう。
「我らとは在り様が違うのだろう」
事も無げにクモザルはそう云うとすたすたと歩き始めた。
「あ、待てよ」
自分よりも随分と小柄な身体を包む外套をはっしと掴むとあっけなくクモザルの動きが止まる。
「…離せ」
「どういう意味か教えてくれるまで離さねえ」
体格の違いがこのようなところで顕著に出る。
はぁ、と溜息を一つついて。クモザルはわかっているくせに、と云いたいのを堪えて、仕方なげに口を開いた。
「今の境遇に満足してるかどうかじゃないのか」
「――――…」
そうだ。あの人は未だに足掻き続けている。
この状況に揺蕩い、機械の腕に頼りきり、己の力を鍛錬することを止め、更に上を目指す事などとうに諦めた自分と違って。
「…そっか」
だが、例え己が機械の腕を外し、己の力を鍛えようとも、矢張りこの違いは変えられまい。
自分は汚泥に塗れて満たされるのが似合い。
そして、あの人は汚泥の中に立ちながらも尚洌く。



ならば、其処から引き摺り落として穢してやりたいとハナカケは思った。









お粗末!